2004年10月10日

コミケ改訂版

コミケに熱狂
まだ七月半ばだというのに、夏本番の強い日差し。照り返す太陽がまぶしい。目の前にはすでに一糸乱れぬ、長蛇の列が出来ている。ここは南大阪のじばしんイベントホールである。今日はここを会場としてコミケが開催されるのだ。私たちは戸惑いながらもその後に続く。まわりを見渡すと、みんな見た目こそ違うものの、どこかしら似たような雰囲気が漂う。手には大きい荷物とそれぞれパンフレットを持ち、10時に開くはずのドアを今か今かと見つめている。
 10時きっかりにドアが開いた。その瞬間、周りの女の子たちがいっせいに駆け出す。何が起こったのか一瞬わからず、そして慌てて後に続いた。入り口のトイレはまたまた長蛇の列。男子トイレはそれほどではないものの、女子トイレは凄まじいことになっている。中を覗くと、みんな必死で作業にとりかかっている。大きな手荷物からなにやら取り出し、着替える者。メイクを念入りに始める者・・・。そう、彼らは皆コスプレイヤーだ。コミケのイベントではあるものの、コスプレをメインにして来る者も少なくないのである。
会場の中に入ると、コミケらしくすでに同人誌の販売やアニメのキャラクターの手作りグッズなどが通路の両側で所狭しと販売されている。そうこうしている間に、会場はあっという間に人がいっぱいになった。いつの間にか、レイヤーたちがどんどん増えてきている。今回は、主にジャンプのアニメがメインらしく、レイヤーには「テニスの王子様」、「鋼の錬金術師」、「NARUTO」のコスプレが多い。しかし、それ以外にも色々いる。ハリーポッターコスプレの「ポッタリアン」や、天使に、ガンダムなどである。

数時間の別世界
その中で、ひときわ目立っている女の子が目に止まった。一見、モデルと見間違うくらいの細くて長い足が鮮やかな水色のミニスカートから伸びている。上に羽織った長いオレンジのひらひら上着が、スレンダーな体型を強調している。彼女のまわりには、不思議な雰囲気が漂っていた。
彼女はとても知り合いが多く、歩くたびに声をかけたり、かけられたりしている。これが本城貴嶺さん(仮名)の第一印象である。彼女は若干18歳。その年齢には似つかわしくない、大人びた顔と、はきはきした喋り方。なぜ、彼女はコスプレをするのだろうか。
「家がコスプレ用の服を作っているっていう影響もあるけど、やっぱり自分の趣味かな。ちなみに今日のコンセプトはガンダムのラクスなんです」。彼女の家は、「えんじぇる★も〜ど」というコスプレ制作のお店を出していて、主に通販で売り出しているという。彼女が堂々と会場内を闊歩するわけは、その着ている商品の宣伝のためでもある。
 しかし彼女がコスプレをするのは、宣伝だけのためではない。「やっぱりコスプレをやるのには、違う自分になれるっていう楽しみがあります。毎回キャラクターを変えるたびに、衣裳も変わるし、新しい自分になれる感があって…」。それは今の自分に満足していないということなのだろうか。常に求める違う自分や新しい自分。その裏側には、現代社会への不満や、自己に対する不満があるのでは?
「そんな大袈裟なもんじゃないですよ。ただ楽しいじゃないですか。その数時間だけは現実とは違う世界にいて、いろんなキャラクターの人と喋って盛り上がるのって。それが終われば衣裳も脱いでまたいつもの自分に戻るんですけどね」カラカラと笑いながら、喋るその様子は、どこかさっぱりしていて割り切っている感じがした。
 それにしても会場には女性が多い。8割以上は女性である。いわゆるカメコという存在はほとんど見当たらない。コミケには、コスプレ焼肉やメイド喫茶のような、男性の視線はない。なぜなのかを尋ねると、「そういう風に見る人は嫌がられるんですよ。いやらしい目で見られるのがいや。ナンパならよそでやれって感じです。女として褒められるより、衣装とかキャラを褒められる方が嬉しいんですよ」と言う。たまに見る、露出の多いコスプレは?「なりたいキャラクターが偶然露出が多いだけですよ。男性が多そうな会場では着ないようにしています」。

素の自分じゃおもしろくない
それにしても彼女は、うまく“自分”というものと“コスプレイヤーとしての自分”を使い分けている。例えば彼女の名前、これはもちろん本名ではない。コスプレイヤーならほぼ全員が持っている、この世界での“コスネーム”なのだという。本城貴嶺として、そのキャラクターになりきることで匿名の世界でめいっぱい楽しむのだ。ただコスプレをするのではなく、そのキャラクターになりきることはそんなに重要なことなのだろうか。
「うーん、重要というか・・せっかく何かのキャラクターの衣裳を着るのに素の自分じゃおかしいし、つまんないでしょ。でも会場内でずっとそのキャラを維持するの、なかなか難しいからみんな一番なりきるのって、やっぱり撮影のときじゃないですかね」。この一言で、会場内で見かけたさまざまな風景に対する違和感が一気に解消された気がした。
そう、コスプレイヤーの人々の多くは“撮影”を目的として足を運んでいる。あちこちで見られるフラッシュの嵐。そんなとき、撮られる側のレイヤーたちを見てみると、決まってなにかのポーズを作る。普通のピースはまずあり得ない。必ず自分がしているそのキャラクターを端的に表すことのできるポーズを作るのである。この貴嶺さんも例外ではない。何度か撮影に応じてくれたとき、決まって色々ポーズをつけてくれる。そこには照れなど生じない。カメラに撮られる瞬間、もう“自分”ではなく“本城貴嶺”としてそのキャラクターになっているからである。しかし、それは会場内だけに限られるという。会場の外でまで“コスプレ”をするのはルール違反。それはコスプレイヤーたちの間で暗黙の了解なのだという。

被るキャラクター
 更に会場内の、一人一人を観察すると、ある面白いことに気が付いた。彼らには法則がある。それは仲間を通じて、その作品を完成させようとすることである。その中で彼らにはキャラクターの設定があり、それぞれがキャラクターになりきり、作品を楽しむ。しかし、当然ながら人気のあるキャラクターなら必然的に他の人と被ることもあるだろう。
 「確かに、レアキャラとかじゃない限り、メジャーなアニメはキャラが被りがちですよね。だからみんな最近アレンジするんです。ただし、あくまでもそのキャラの特徴とかは変えないんです。微妙に色を変えたり模様を変えたり。自分のオリジナルでそのキャラを表現するんですよ」。しかしこのアレンジというものには、現代社会に充満する「個性主義」を感じずにはいられない。人と同じでは嫌。自分オリジナルを求める傾向である。もちろんレイヤーの全てがそうではない。しかし本来キャラになりきる没個性のコミケ社会にも、個性主義が侵入し始めているのかもしれない。

コスプレはどんどん広がる
最後に彼女に質問した。今後コスプレはどうなると思う?「今はまだコスプレは社会には反適合な感じがします。全体的に偏見の目とかあって認められてないっていうか。でも、これからどんどん広がると思います!もうすぐ社会に求められるんじゃないかな、コスプレが。そうなったとき、私たちを偏見の目で見てた社会を見返したいですね」にっこり笑って最後に彼女はこう言った。
いわいるおたくのように「自分らの文化は一般人にわかるはずがない」というスタンスではない。社会に反適合と見られているとわかっているからこそ、「変な人たち」とみられないように、レイヤーはルールやマナーと言ったものを厳守する。コスプレが社会に求められる時代、果たしてそんな時代は来るのだろうか。いや、もう近くまできているのかもしれない。彼女の言葉はそう思わせられるほどに、妙な説得力を持っていた。



情景描写のとこやけど、やっぱりレイヤーのトイレのシーンは必要かなって思った。コミケとか知らない人が読んだとき、たいていそこらヘんのシーンでへぇ〜って言ってるし。それに、レイヤーが常識は守る=コスプレの服は着てこないっていう最後の主張を端的に表してるんじゃないかと思って…。もしも字数的にいけるならいれたいです。
posted by なおみ at 22:15| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 礼儀を守るの布石としてならいるかもな。あとやっぱり「へぇー」て言わすことも必要やしな。俺は取材行ってきたんだぞみたいなんを見せるだけならいらんと思ったけど、ちゃんと論にもつながるし、量いけた使っても良いと思う。
Posted by かずき at 2004年10月10日 22:39
俺も入れるべきだと思います。あと、コミケの説明とかは結局入れないことにしたの?
あと、コミケに並んでいる人と会場内の人の様子が描写足りないと思い、付け加えてみました。付け加えばかりで申し訳ないのですがいかがでしょう?


コミケに熱狂
まだ七月半ばだというのに、夏本番の強い日差し。照り返す太陽がまぶしい。
 今日はここ南大阪で同人誌即売会、いわゆるコミケがある。駅から出て会場までの地図を見ていると、ふと人の流れができていることに気づいた。黒っぽい服に身を包んだ女の子たちの集団がキャリーケースを片手に目の前を通り過ぎて行く。まさか、と思いその後を着いていくと会場に到着した。開園三十分前というのにそこにはもう長蛇の列があった。コミケではチケットが完売し、入場規制がかかることも稀ではないらしい。私たちも慌てて並ぶ。
 意外なことに中高年の女の子が大半で、2、3人のグループで並んでいる。黒いパンキッシュな服装の人から、ジーパンにトレーナーといったカジュアルな人もおり、客層は様々だ。男の子は数えるほどだった。
 各々、知り合いも多いらしく挨拶回りをし、名刺を配ったりしている子もおり、待ち時間をコミュニケーションの場としても使っていた。
 そうこうしているうち、10時きっかりにドアが開いた。その瞬間、周りの女の子たちがいっせいに駆け出す。何が起こったのか一瞬わからず、慌てて後に続いた。中に入ると入り口近くにあったトイレにはあっという間に長蛇の列ができている。男子トイレはそれほどではないものの、女子トイレは凄まじいことになっている。中を覗くと、みんな必死で作業にとりかかっている。大きな手荷物からなにやら取り出し、着替える者。メイクを念入りに始める者・・・。なるほど、彼女らは皆コスプレイヤーだ。コミケのイベントではあるものの、コスプレをメインにして来る者も少なくないのである。
会場の中に入ると、コミケらしくすでに同人誌の販売やアニメのキャラクターの手作りグッズなどが通路の両側で所狭しと販売されている。そうこうしている間に、会場はあっという間に人がいっぱいになった。いつの間にか、レイヤーたちがどんどん増えてきている。今回は、主にジャンプのアニメがメインらしく、レイヤーには「テニスの王子様」、「鋼の錬金術師」、「NARUTO」のコスプレが多い。しかし、それ以外にも色々いる。ハリーポッターコスプレの「ポッタリアン」や、天使に、ガンダムなど。
Posted by at 2004年10月11日 04:58
……微妙に色を変えたり模様を変えたり。自分のオリジナルでそのキャラ表現するんですよ。」しかしこのアレンジというものには……侵入し始めているのかもしれない。

      ↓


……微妙に色を変えたり模様を変えたり。自分のオリジナルでそのキャラ表現するんですよ。」
 人とは違う。アレンジした自分らしいコスプレ。瞳を輝かせてそう語る、ひたむきな一人の少女の姿がそこにはあった。


ここでは、やっぱ個性の話は直接的には記述しませんでした。でも匂いはさせているつもりです。濁点とか(しつこいようなら入れないほうがいいかも)、最後の「一人の少女」という記述で「巣の自分」というもので語っている…みたいな感じを出したつもりです。その分、個性の直接的な話はまとめにわかりやすいように持ってきました。







夜明け前
 コスプレは、様々な“衣装”を身に着け、そこから造りだされる“空間”を受け入れることによって「変身」を可能にさせていた。ある時はメイド、ある時はガンダムのラクス、またある時はセクシーな衣装に身を纏った誰か。それは見た目だけでなく思考までもを“今の自分”から“違う自分”に変身させてくれる。それはちょうど私たちが「イメチェン」と呼ぶ、髪型を変えたり、服装を変えたりする行為に似ている。
 しかし、メトロ大学のK´さんやコミケで出会った本城さんは、それでもコスプレに“自分らしさ”を求めてしまった。いや、求めざるをえなかったのかもしれない。
 それが、コスプレが可能にさせてくれる「変身」の限界なのだろうか。いや、私たちはそうは思わない。メイド喫茶の徹底された空間や、コスプレ焼肉で働く少女たちの性に対する意識は新しい時代の夜明け前を感じさせずにはいられないのだった。


きっかり十行でまとめたけどいかがでしょう?「新コスプレ時代」という題名につながるようにまとめたけど、少し「ポストモダンのコスプレ万歳色」が強い気がするんだけど…いかがでしょう。
Posted by kouhei at 2004年10月13日 04:48
上の「夜明け前」はワードでやった時十行やったから、改正前のかずきのまとめと分量的には一緒だから、あしからず。決して書きすぎではありませぬ。
Posted by こうへい at 2004年10月13日 04:52
 『それはちょうど私たちが「イメチェン」と呼ぶ、髪型を変えたり、服装を変えたりする行為に似ている。』
 これは似ているのか???上の文章を入れたのは、変身願望があるって言うためではないん???これでは上の文章が心の変身ってことやんな??でも今の個人ありきで変身とちっと違う気もする。
Posted by かずき at 2004年10月13日 20:30
夜明け前って題はビビッときたわ☆新コスブレ時代にうまくつながるような気がした!この題と最後の部分は使えるんじゃない?先になおちゃんの読んでコメントしてるんやけどうまくくっつけられないかな
Posted by まなみ at 2004年10月14日 00:27
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