2004年11月14日

ニューメトロ

『メトロ大学開講』
 8月某日、私たちは京都のとあるライブハウスに出かけた。
 今夜、ここで「コスプレ」についての講演会が開かれるという。このライブハウスは、毎月数回、カルチャースクールとして様々な分野の人々を講師として呼び、まるで大学のように講座を展開している。
 創立14周年を機に、文化創造と発信の“場”として始めたのだというが、とても斬新な試みである。
 まわりのお客さんを見渡した。私たちのほかに、十人ほどいる。現役のコスプレイヤーもいれば、フツウの学生もいて、人種はさまざまである。
「えー、では少々時間はずれ込みましたが、これよりメトロ大学“コスプレ講座”、始めていきたいと思います!どうぞ、本日はよろしくお願いします!」
 ピカッ。スポットライトがまぶしい。いきなり、舞台があかるくなった。
 すらっと背は高く、長めの髪に整った顔立ち。舞台にたつ彼の名前はK´(Kダッシュ)。自称レイヤード・日本代表である。
 彼の衣裳は青のマントに白の縁取りの戦闘服。
“鋼の錬金術師のイケメンキャラ”の衣裳だという。その衣裳代はなんと五万円。
 その衣裳はキャラの特許をとったロゴ入りの本物の衣裳だそうで、その稀少性からそれくらいの金額はくだらないらしい。
 この手の衣裳は人気のアニメということもあり、似せて作ったものは安くていくらでもある。しかし、あくまで「本物」にこだわる。そのこだわりと惜しまないお金の使い方に、彼のコスプレに対する熱い思いが伝わってくる。
 
  『コスプレ界の変動〜共通の世界観の喪失〜』
「まずはコスプレの歴史について話を進めていきたいと思います!」
 こう前置きして彼は黒板に次々と文字を書き込む。
 まず、コスプレは二つの意味を持っていたこと。一つ目はおたく文化から派生した趣味、もう一つは社会風俗から派生した女性がするサービスのこと。今日話す内容は、あきらかに前者。コスプレはいつくらいから始まったのか。
「日本には、“オタク”と呼ばれる人種が多いですよね。それは日本の文化においてアニメや漫画が海外に比べてかなり発達していたからなんです。そういったこともあり、次第にアニメのキャラクターの格好をする人が出てきた。最初はやっぱり・・・・・・。」
 彼は10分ほど休むことなく話続けた。日本のアニメ文化・コスプレ文化に誇りを持っているのが伝わる。1994年頃からコスプレは繁栄期を迎える。
 そして、コスプレブームはあるモノの普及がきっかけでまた風向きが変わったという。
「1995〜98年は、コスプレの商業化が始まります。大体、このあたりから撮影重視のイベントとかが増加してきてコスプレイヤー同士の一体感がなくなってくるんですよね。それはなんでかというと、1998年頃からパソコンの普及が大きいんです。」
 パソコンの普及。これはなかなか興味深い。どういう影響を与えたのだろう。
「パソコンの普及で、そのコスプレしてる写真を見て、単純に衣裳がかわいいからとかかっこいいからやるって人も増えてきた。いわゆるブームってやつです。まさにいろんな人がコスプレを気軽にやり始めたんですよ。そもそも最近のレイヤーは・・・・。」
 彼はそう続けると、ふんと鼻で笑った。その顔は興味本位でコスプレする奴は目障りだ、とでも言いたげだった。
 言うまでもなく、彼は何年もレイヤーをやり続けている。
 これはまさにレイヤー同士の共通の世界観の喪失ではないだろうか。
 一方は、自分がしているキャラクターのファン。もちろんその漫画のストーリーも完璧にわかる。
 しかし一方で、自分がしているキャラがなんのアニメかさえわからずに、ただその見た目に惹かれてコスプレをする。彼らの中で達成感や仲間意識はもはや生まれない。
 最初は一通りしかなかったレイヤーのカタチが分裂したともいうべきなのだろうか。
 そうなればK´さんのようにコスプレやキャラクターに思い入れがある人は、ますますオリジナルや知識に固執し始める。どうやらコスプレ界に大きな変動が起きていたようだ。     

『二重のロールプレイング』
「今、レイヤーのなかで主流となっているのがコスネームをつけることなんです。彼らはコスネームを作ることによって、『コスネームを持つ自分』と、さらに『キャラクターになりきる自分』という二重のロールプレイングをしていることになるんです」
 コスネーム。どこかで聞いた言葉。コミケ会場でインタビューした本城貴嶺さんを思い出した。彼女もまた、“コスネーム”を持つレイヤーの一人だった。
 彼女はうまく“自分(本名:米林さん)”と“本城貴嶺としての自分”と“ガンダムのラクスになりきる本城貴嶺”を使い分けていた。それがまさに自分というものを持ちながらも二重のロールプレイングをするということなのだろう。
 貴嶺さんは、
「コスプレは大好きだしやめたくないもの。でもこれはあくまで趣味なんです。日常生活に支障が出るならやめると思います。バイトが忙しいときはコミケに行く回数を減らしたりもします。」
 あくまでコスプレはロールプレイングゲーム。安定した日常生活があって初めて楽しめるもの。だから日常生活にコスプレを持ち込んだり、日常生活を犠牲にしてまでコスプレをすることはない。
 しかし話を聞いているとK’さんは、コミケだけではなく、仕事も“K´”として生活する。彼には日常と非日常の境い目はなく、そこにはロールプレイングは存在しない。同じレイヤー同士でもこれだけ違う。
 今後コスプレはどうなると思う?貴嶺さんにたずねてみた。
「今はまだコスプレは社会には反適合な感じがします。全体的に偏見の目とかあって認められてないっていうか。でも、レイヤーの中ではこれからどんどん広がるって言ってる人が多いです!レイヤー向けの雑誌も最近増えてるみたいですし。コスプレ人口も増えてますし。もうすぐ社会に認められるんじゃないかな。」
 さらに、彼女は言った。
「でもコスプレは、コミケ会場のなかだけでしかやらないんです。会場の外でするのは、ルール違反。これはレイヤーのなかでの暗黙の了解なんです。」
 会場に入るとき、レイヤーたちが少しの乱れもなく、まっすぐに並んで順番待ちしていた光景が目に浮かんだ。
 そして丁寧すぎる彼女の喋りかた。社会に反適合と考えるからこそ、「ヘンな人たち」とみられないよう、必要以上にルールやマナーを守るという意識のあらわれなのだろうか。
 コスプレが社会に入ってくることはどう思う?
「少し前に名古屋で国際コスプレなんとか?っていう名目で外国の方(レイヤーさん)を招いて大須の街をコスプレしながら練り歩くといった、少し理解し難い企画がテレビ局経由で開催されたんですよ。方法はいろいろだけど、最近コスプレという世界の情報が、外に出る機会が増えてきてるみたい。」
 少し悩んでから、まっすぐこっちを見て彼女は答えた。
「私個人としては、そのような企画に対してはっきり言ってひきました。」
 レイヤーの中には、コスプレが社会に認められることを喜ぶ人がいる一方で、貴嶺さんのように社会に認められることに不快感を覚える人もいる。
「コスプレはあくまで非日常的なもので、あくまで趣味だからこそ楽しいもの。」
posted by なおみ at 21:55| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
和樹に前渡しておいた手直しバージョンはどうなん?見比べてみて、もし使えそうなとこあったら、岡本さんに教えてあげて
>かずき
Posted by こうへい at 2004年11月15日 21:35
『メトロ大学開講』
 8月某日、京都のとあるライブハウス。
 今夜、ここで「コスプレ」についての講演会が開かれるという。普段は、普通のライブハウス。しかし毎月数回、カルチャースクールとして様々な分野の人々を講師として呼び、まるで大学のような講座を展開している。
 創立14周年を機に、文化創造と発信の“場”として始めたのだという。
 客席には、既に十人ほどの人が座っている。現役のコスプレイヤーもいれば、フツウの学生もいて、人種はさまざまである。
「えー、では少々時間はずれ込みましたが、これよりメトロ大学“コスプレ講座”、始めていきたいと思います!どうぞ、本日はよろしくお願いします!」
 ピカッ。スポットライトがまぶしい。いきなり、舞台があかるくなった。
 すらっと背は高く、長めの髪に整った顔立ち。舞台にたつ彼の名前はK´(Kダッシュ)。自称レイヤード・日本代表である。
 彼の衣裳は青のマントに白の縁取りの戦闘服。
“鋼の錬金術師のイケメンキャラ”の衣裳だという。その衣裳代はなんと五万円。
 その衣裳はキャラの特許をとったロゴ入りの本物の衣裳だそうで、その稀少性からそれくらいの金額はくだらないらしい。
 この手の衣裳は人気のアニメということもあり、似せて作ったものは安ければいくらでもある。しかし、あくまで「本物」にこだわる。そのこだわりと惜しまないお金の使い方に、彼のコスプレに対する熱い思いが伝わってくる。
 
  『コスプレ界の変動〜共通の世界観の喪失〜』
「まずはコスプレの歴史について話を進めていきたいと思います!」
 こう前置きして彼は黒板に長々と文字を書き込む。
 まず、コスプレは二つの意味を持っていたこと。一つ目はおたく文化から派生した趣味、もう一つは社会風俗から派生した女性がするサービスのこと。今日話す内容は、あきらかに前者。コスプレはいつくらいから始まったのか。
「日本には、“オタク”と呼ばれる人種が多いですよね。それは日本の文化においてアニメや漫画が海外に比べてかなり発達していたからなんです。そういったこともあり、次第にアニメのキャラクターの格好をする人が出てきた。最初はやっぱり・・・・・・。」
 彼は10分ほど休むことなく話続けた。日本のアニメ文化・コスプレ文化に誇りを持っているのが痛いほど伝わる。1994年頃からコスプレは繁栄期を迎える。
 そして、コスプレブームはあるモノの普及がきっかけでまた風向きが変わったという。
「1995〜98年は、コスプレの商業化が始まります。大体、このあたりから撮影重視のイベントとかが増加してきてコスプレイヤー同士の一体感がなくなってくるんですよね。それはなんでかというと、1998年頃からパソコンの普及が大きいんです。」
 パソコンの普及。これはなかなか興味深い。どういう影響を与えたのだろう。
「パソコンの普及で、そのコスプレしてる写真を見て、単純に衣裳がかわいいからとかかっこいいからやるって人も増えてきた。いわゆるブームってやつです。まさにいろんな人がコスプレを気軽にやり始めたんですよ。」壇上に置いてある水を一気に含み、ふんと鼻で笑った。
「そもそも最近のレイヤーは・・・・」。 その顔は興味本位でコスプレする奴は目障りだ、とでも言いたげだった。
 言うまでもなく、彼は何年もレイヤーをやり続けている。
 彼が嘆くのは、レイヤー同士の共通の世界観の喪失である。
 一方は、自分がしているキャラクターのファン。もちろんその漫画のストーリーも完璧にわかる。
 しかし一方で、自分がしているキャラがなんのアニメかさえわからずに、ただその見た目に惹かれてコスプレをする。彼らの中で達成感や仲間意識はもはや生まれない。
 最初は一通りしかなかったレイヤーのカタチが分裂したともいうべきなのだろうか。
 そうなればK´さんのようにコスプレやキャラクターに思い入れがある人は、ますますオリジナルや知識に固執し始める。どうやらコスプレ界に大きな変動が起きていたようだ。     

『二重のロールプレイング』
「今、レイヤーのなかで主流となっているのがコスネームをつけることなんです。彼らはコスネームを作ることによって、『コスネームを持つ自分』と、さらに『キャラクターになりきる自分』という二重のロールプレイングをしていることになるんです」
 コスネーム。どこかで聞いた言葉。コミケ会場でインタビューした本城貴嶺さんを思い出した。彼女もまた、“コスネーム”を持つレイヤーの一人だった。
 彼女はうまく“自分(本名:米林さん)”と“本城貴嶺としての自分”と“ガンダムのラクスになりきる本城貴嶺”を使い分けていた。それがまさに自分というものを持ちながらも二重のロールプレイングをするということなのだろう。
 貴嶺さんは、「コスプレは大好きだしやめたくないもの。でもこれはあくまで趣味なんです。日常生活に支障が出るならやめると思います。バイトが忙しいときはコミケに行く回数を減らしたりもします。」
 あくまでコスプレはロールプレイングゲーム。安定した日常生活があって初めて楽しめるもの。だから日常生活にコスプレを持ち込んだり、日常生活を犠牲にしてまでコスプレをすることはない。
 しかし話を聞いているとK’さんは、コミケだけではなく、仕事も“K´”として生活する。彼には日常と非日常の境い目はなく、そこにはロールプレイングは存在しない。同じレイヤー同士でもこれだけ違う。
 今後コスプレはどうなると思う?貴嶺さんにたずねてみた。
「今はまだコスプレは社会には反適合な感じがします。全体的に偏見の目とかあって認められてないっていうか。でも、レイヤーの中ではこれからどんどん広がるって言ってる人が多いです!レイヤー向けの雑誌も最近増えてるみたいですし。コスプレ人口も増えてますし。もうすぐ社会に認められるかもしれないですね。」
 さらに、彼女は言った。
 「でもコスプレは、コミケ会場のなかだけでしかやらないんです。会場の外でするのは、ルール違反。これはレイヤーのなかでの暗黙の了解なんです。」
 会場に入るとき、レイヤーたちが少しの乱れもなく、まっすぐに並んで順番待ちしていた光景が目に浮かんだ。
 そして丁寧すぎる彼女の喋りかた。社会に反適合と考えるからこそ、「ヘンな人たち」とみられないよう、必要以上にルールやマナーを守るという意識のあらわれなのだろうか。
 コスプレが社会に入ってくることはどう思う?
「少し前に名古屋で国際コスプレなんとか?っていう名目で外国の方(レイヤーさん)を招いて大須の街をコスプレしながら練り歩くといった、少し理解し難い企画がテレビ局経由で開催されたんですよ。方法はいろいろだけど、最近コスプレという世界の情報が、外に出る機会が増えてきてるみたい。」
 少し悩んでから、まっすぐこっちを見て彼女は答えた。
「私個人としては、そのような企画に対してはっきり言ってひいちゃいました。だって、コスプレってそういうものじゃないんですよ。」
 レイヤーの中には、コスプレが社会に出ることを喜ぶ人がいる一方で、貴嶺さんのように必要以上に、社会に出ることに不快感を覚える人もいる。
「コスプレはあくまで非日常的なもので、あくまで趣味だからこそ楽しいものなんです。そこらへんでコスプレを目にするようになれば、それはもうコスプレじゃなくて、ファッションですよ。」

少し訂正。一応見といて。こうへいの入れるとこは入れたよ。野田ちゃん、できれば水曜に記事にしてほしいっす。
Posted by かず at 2004年11月16日 03:47
うん、訂正いいと思う。細かいけど最後の言葉、「コスプレはあくまで非日常なもので、あくまで趣味だからこそ楽しいもの。そこらへんでコスプレを目にするようになれば、それはもうコスプレじゃなくて、ファッションなんですよ。」
 あまり変わらないけど、こっちのが強調できるかなーと思って…。メイド喫茶はどうしよー。ポスターとか入れるべき?
Posted by なおみ at 2004年11月16日 20:48
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