2004年11月14日

ニューコミケ2

目の前には、どこまでもまっすぐな、長蛇の列ができている。
ここは、南大阪のじばしんイベントホール。今日はここを会場として、同人誌即売会、いわゆるコミケが開催される。
午前十時。前の扉が開いたとたん、周りの女の子たちがいっせいに駆け出す。ビジュアル系の集団からジーパンにTシャツといったフツウの格好の子たちと、さまざまだ。共通しているのはみんな不自然なほど大きい荷物を持ってるということ。
彼女たちがまず最初に向かった先はトイレ。中を覗くと、みんな必死で作業にとりかかっている。大きな荷物からなにやら取り出して着替える子、メイクを念入りに始める子・・・。
そう、彼女らはみな、コスプレをする子たち。いわゆるコスプレイヤー。(以後、レイヤーと呼ぶ)コミケのイベントではあるものの、コスプレをメインにして来る子も少なくないのだ。
今回のコミケは、おもにジャンプのアニメがメイン。レイヤーには「テニスの王子様」、「鋼の錬金術師」、「NARUTO」のコスプレが多く見られる。それ以外にも、ハリーポッターのコスプレの「ポッタリアン」や、天使にガンダムなどがいる。

「数時間の別世界」
そのなかでも、特別目をひく女の子がいた。
「久しぶりー、元気してた?」
「六月のイベント以来だねー。次の大きいイベントは行くの?」
次々と、会場内を歩きながら、声をかけたり、かけられたりしている。
モデル顔負けのスタイルのよさ、金髪の髪に、きらびやかなコスチュームをまとった彼女は、本城貴嶺さん(仮名)。
おそるおそる取材を申し込むと、じっとこちらを見据えて
「いいですよ。」と一言。さらにていねいに名刺までくれた。
彼女は若干18歳。その年齢には似つかわしくない丁寧すぎる言葉づかいと、落ち着いた喋りかた。どうして、コスプレを始めたのだろう。
「家がコスプレ用の服を作ってるっていう影響もあるけど、やっぱり自分の趣味ですかね。ちなみに今日のコンセプトはガンダムのラクスなんです。」
そういいながら、彼女は着ている服を指さした。鮮やかな水色のミニスカートに、長いオレンジ色のひらひら上着。これ、自分で作ったの?
「そうなんですよー。家の二階におばあちゃんのミシンがあって、それで作りました。ウチの商品はほとんど祖母が作ってるんです。」静かに淡々とした口調。
彼女の家は、「えんじぇる★も〜ど」というコスプレ制作のお店を出していて、主に通販で売り出しているという。
 「だから会場内を歩き回って、ウチの服の宣伝してるんですよー。興味もってくれた人には自分の名刺も渡します。今日だって、そのために二回も着替えたんですよ。ちょっとめんどくさいですよねー。」
 そう言いながらも、彼女の頬は緩んでいる。宣伝とか関係なくても、コスプレするの好きなんでしょ?
「そうですね。」ニコッと笑いながら、彼女はぐっと身をのりだした。
「やっぱり、コスプレをやるのには、違う自分になれるっていう楽しみがあります。毎回キャラクターを変えるたびに、衣裳も変わるし、新しい自分になれる感があって…。」
 話しながら、だんだん声や身ぶり手ぶりが大きくなってきた。
「だって、楽しいと思いません?自分がキャラクターになってる数時間だけは現実と違う世界にいて、いろんなキャラクターの人と喋って盛り上がるのって。だからコミケとか、コスプレのイベントは大好きなんです。まぁそれが終わればまた、いつもの自分に戻るんですけどね。」
カラカラと笑いながら、喋るその姿は、どこかさっぱりしていて割り切っている感じがした。
ところで、いつもの自分ってどんなのなのだろう。
「いつもの自分は…コンビニでアルバイトをしています。あと、コスプレ友達と遊んだりとか。フツーですよ。でも友達もふだんは学生や、派遣社員とかしていて、お互いあんまり会えないんです。日常の生活はつまんない。飽きてくるんですよね。同じことの繰り返しで。だから、今日みたいな脱・日常みたいなトコに来ると、かなり楽しいんです。」
ああ、そうか。さっき会場内で歩きながら、他のコスプレイヤーの人たちと楽しそうにおしゃべりしていた彼女を思い出した。彼女にとって、この場所はなくてはならないものみたいだ。
 それにしても会場には女性が多い。八割以上は女性である。いわゆるカメコという存在はほとんど見あたらない。コミケには、コスプレ焼肉や、メイド喫茶のような、男性の視線はない。
 その理由をたずねると、彼女は顔をしかめながら、髪の毛をさわり始める。
「そういうふうに見る人は嫌がられるんですよ。いやらしい目で見られるのがイヤ。ナンパならよそでやれって感じです。みんな女として褒められるより、衣裳とかキャラを褒められるほうが嬉しいんですよ。」
 じゃあたまに見る、露出の高いコスプレは?
「なりたいキャラクターが偶然露出が多いだけですよ。やっぱり、衣裳も本物に似せて作りたいし。でも、男性が多そうな会場では着ないようにしています。」

「素の自分じゃおもしろくない!」
 彼女は、うまく“自分”というものと、“コスプレイヤーとしての自分”を使い分けている。たとえば彼女の名前。これはもちろん本名ではない。
 コスプレイヤーならほぼ全員が持っている、この世界での“コスネーム”なのだという。
 本城貴嶺として、そのキャラクターになりきることで、匿名の世界をめいっぱい楽しむのだ。ただコスプレをするんじゃなくそのキャラクターになりきることは、そんなに重要なことなのだろうか。
「うーん、重要というか・・」
首をかしげてしきりに金色の髪をさわっている。困ったときに髪をさわるのは彼女の癖なのだろう。
「せっかく何かのキャラクターの衣裳を着るのに素の自分じゃおかしいし、つまんないでしょ。でも会場内でずっとそのキャラ維持するの、なかなか難しいからみんな、一番なりきるのって、やっぱり撮影のときじゃないですかね。」
 撮影のとき。この一言で、会場内で見かけたさまざまな風景に対する違和感が、いっきに解消された気がした。
 そう、コスプレイヤーの多くは、“撮影”を目的として足を運んでいる。
 あちこちに見られるフラッシュの嵐。そんなとき、撮られる側のレイヤーたちを見ていると、決まって何かのポーズを作る。フツウのピースはまずありえない。必ず自分がしているそのキャラクターを端的にあらわすことのできるポーズを作るのだ。
 この貴嶺さんも例外ではない。何度か撮影に応じてくれたとき、決まっていろいろポーズをつけてくれる。そこには照れなど生じない。
 カメラに撮られる瞬間、もう“自分”ではなく、“本城貴嶺”としてそのキャラクターになりきっているからだ。
でも、みんながみんな写真をとろうとするには、カメコが少なすぎじゃない?
「あはは。カメコなんていてもいなくても一緒かも。だって、あの人たち、べつにコミケじゃなくてもいいし、アイドルとか、露出が高いコンパニオンのイベントにだって行くと思います。」
 え、そうなの?じゃあ誰がとるの?
「だから、撮り合いなんです。たいてい、グループ同士で『写真、撮らしてください』って言い合うの。ほんとは、たいして撮りたくなかったりするんだけど、ほら、みんな自分をとってほしいから。」
 そうだったのか。会場内のフラッシュの嵐に、そんな意味があったとは。
あらためて、コスプレイヤーたちの決めポーズを見ているとそんな気がした。みな写真を撮られるために、ばっちり用意してきているのだろう。コスプレ焼肉が見る側志向のサービス感覚のコスプレだとしたら、コミケはまさにやる側志向のコスプレ。
最後に貴嶺さんがつぶやいた。
「私は、服屋さんだからたまたま知り合いが多くて、撮ってもらえるんですよー。でもやっぱりみんな、無条件に写真とってくださいって言われるのを目指してるんです。」


 また変えてみました。最後見る人志向やる人志向を直で書いたけど、どう思う?はっきり書かないほうがいいんかなー。全体的に読んだ感想またのせといてー。
posted by なおみ at 16:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
@コスプレ焼肉が見る側志向のサービス感覚のコスプレだとしたら、コミケはまさにやる側志向のコスプレ。

→コスプレ焼肉が見る側を意識した、サービスのコスプレだとしたら、コミケは見る側を意識しない自己満足のコスプレ。
 *ここは使っても良いと思う。言い方をこーへい、野田ちゃんも考えて。

A撮影のとき。この一言で、会場内で見かけたさまざまな風景に対する違和感が、いっきに解消された気がした。
→あえてここはカットすべき??どうだろう?
Posted by かずき at 2004年11月14日 22:17
@コスプレを見る人とやる人に分けるならば、コスプレ焼肉はまさに見る人のためのコスプレ。逆に、コミケのコスプレはやる人のためのコスプレ。

A僕もカットすべきだと思う。なぜなら、筆者の主観が出すぎると思うから。
Posted by こう at 2004年11月15日 21:28
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